錦玉羹
クリスタルガラスのような透明感と冷たさが魅力の錦玉羹は、特に夏に人気がある生菓子ですね。洋菓子のゼリーのように、基本の錦玉羹に別の素材を混ぜたり、様々な形の流し型を使ったりすることで、幅広い応用が楽しめます。写真のものは琥珀羹で、カラメルソースで色付けと味付けをしたものです。黒蜜や Molasses (糖蜜)を使えば異なる風味になりますし、好みで甘納豆を一粒入れても趣があります。(調理時間:約30分。寒天の吸水時間および錦玉羹の冷却時間を除きます)
手順
- 寒天はあらかじめ水洗いして、たっぷりの水で一晩浸しておきます。戻した寒天はざるにあげて水気を切り、棒寒天の場合は細かく千切っておきます。
- 1と水を入れた鍋を火にかけて沸騰させ、焦げない程度に鍋の底の方だけ木べらでゆっくりかき混ぜながら、寒天を完全に煮溶かします。木べらですくい上げてみて、寒天の溶け残りが無いことを確認して下さい。
- 2に砂糖を混ぜ合わせ、一度沸騰させて砂糖を完全に煮溶かします。
- 新しい鍋にさらし木綿をかぶせて、そこに3の液を注いで漉し出し、天然寒天の不純物を除きます。
- 4を再び火にかけ、温度が100°Cを越えるぐらいまで煮詰めます。
- 最後に水飴を加えて溶かし、火から下ろします。
- 水で濡らした型に流し入れます。そのまま室温で冷まして固めますが、さらに冷蔵庫で冷やしても良いです。
- 型から取り出し、適当な大きさに切って、できあがり。
メモ&アレンジ
- 錦玉羹は透明度が大切なので、糸寒天をお勧めします。天然寒天は水を吸って重さが17〜20倍ぐらいに増えます。古いものは水に浸しても戻りにくいので、できるだけ新しいものを購入して下さい。
- 粉末寒天の場合は、水の分量を750mLにして、手順1と4を省略して下さい。なお、天然寒天に比べて水に溶けやすいので、電子レンジで煮溶かすこともできます。
- 寒天が完全に溶ける前に砂糖を加えると、寒天が溶けなくなってしまいます。
- 砂糖を溶かした後は、生地をかき混ぜすぎると錦玉羹の弾力が弱くなってしまいます。
- 錦玉羹は固めては溶かすのを何回も繰り返すと、茶色く焼けてしまいます。冷やし固めるまで時間があく場合は、湯煎で保温して下さい。
- 層状に重ねたい時は、下の層の表面に膜が張った頃(
半止まり
:濡れた指で表面に触れると、指先にその表面がほんの少し付いて、すぐ離れる状態)に、次の層の羹を均一にかつゆっくりと流し入れます。半止まりより早い時点で流し入れると下の層と混ざってしまい、遅すぎると層が剥がれてしまいます。
- 流し型は専用のものがありますが、米国では手に入りにくいです。代わりに小さいパウンドケーキ型やプディング型などの洋菓子用道具や、ショットグラスやおちょこのような小さい容器が使えます。
- 固まった錦玉羹を型から綺麗に取り出すには、楊枝やバターナイフなどを型の内側に沿って差し込んで空気を入れ、羹が剥がれ出てくるまで型をゆっくり傾けて下さい。切り分けたり皿に盛りつけたりする時は、包丁や手を水で濡らして下さい。
- できあがった錦玉羹は、密封して冷蔵・冷凍保存できます。
錦玉羹に異なる素材を混ぜ合わせて、以下のような色々な羹を作ることができます。素材に合わせて、水や砂糖、水飴の分量を加減して下さい。なお、多くの羹は生地が熱いうちに型に流し入れると二層に分離してしまいます。均一に混ざったまま固めるには、鍋の底を水に漬けてゆっくりかき混ぜて荒熱を取ってから(42°C前後。熱めのお風呂ぐらい)、型に流し入れて下さい。
- 練り羊羹
- 手順5で小豆漉し餡600gを溶かしてよく練り、生地を垂らすと表面に線が書けてすぐ消えるぐらいまで煮詰めます。同様に、白漉し餡で白練り羊羹、粒餡で小倉羊羹を作ることができます。
- 水羊羹
- 水気が多くて柔らかいあっさり味の羊羹で、よく冷やして食べると美味しいです。練り羊羹における寒天と小豆漉し餡の分量を半分にして、好みに合わせて水の分量を500mL前後にします。手順5で餡を溶かし、沸騰したら水飴ではなく塩を少々加えて、すぐに火を止めます。
- 泡雪羹
- 真っ白でふわっと軽い口溶けの羹です。冷やした卵白30g(約1個分)を泡立てて、途中でグラニュー糖を小さじ1杯ずつ2回加えながら、角がピンと立つまでよく泡立てます。このメレンゲに錦玉羹を少しずつ加えながら混ぜ合わせます。錦玉羹の代わりに羊羹をメレンゲに混ぜたものは、
東雲羹
と呼ばれます。
- 道明寺羹
- 透明の錦玉羹の中に白いつぶつぶが漂う羹で、
みぞれ羹
とも呼ばれます。道明寺粉30gとぬるま湯大さじ3杯を耐熱性のボウルに入れてよく混ぜ、すぐにラップをかけて水分が無くなるまで蒸らします。もし芯が残っていたら、熱湯を加えて混ぜ、柔らかくなるまで電子レンジで30秒〜2分ぐらい加熱します。ざるにあげて水気を切り、砂糖大さじ1杯を混ぜておきます。これを錦玉羹と混ぜ合わせます。
- 吉野羹
- 葛の滑らかな口当たりが加わった羹です。葛粉10gを水大さじ2杯でよく溶かして裏漉ししたものを、錦玉羹に混ぜ合わせます。葛粉に火を通すために、もう一度沸騰させます。
- 果実羹
- 錦玉羹を型に流し入れ、やや冷めてからフルーツの生や蜜煮などを入れます。熱いうちにフルーツを入れると、型の底に沈んだり表面に浮いたりしてしまうことがあります。果汁を錦玉羹に混ぜる場合は、手順3で砂糖を溶かしてから果汁を加えて下さい。
- その他
- 味甚粉(蒸して乾燥させた餅米を煎って粉末状にひいたもの)を混ぜた味甚羹や、山芋を混ぜた薯蕷羹などがあります。他にも、果実酒、洋酒、コーヒー、紅茶、緑茶、中国茶など、色々な素材と組合わせることができます。
細工例
紫水晶
初夏が旬であるブルーベリーを使って、紫水晶の原石を表してみました(紫水晶は2月の誕生石ですが…^-^;)。紫色の果実羹、無色透明の錦玉羹、白の泡雪羹の三層重ねです。流し型は、トイ型の代わりに6×12cmのミニパウンドケーキ型を2個使いました。
- 小さい耐熱性容器に生ブルーベリー25g(約20粒)と水大さじ2杯を入れて、電子レンジで1〜2分間加熱します。ブルーベリーがつぶれて液が沸騰したら、15秒間ほど煮詰めて加熱を止めます。これをさらし木綿またはペーパータオルで漉して、ブルーベリーの種や繊維を取り除きます。この果汁とは別に、生ブルーベリー8粒を水洗いして、水気をふき取っておきます。
- レシピの2倍量の錦玉羹を作り、半分を取り出して1のブルーベリージュース大さじ2杯で紫色に染めます。残りは湯煎で保温しておきます。
- 紫色の果実羹を水で濡らした型へ静かに流し入れます。1の生ブルーペリーを等間隔に入れ、表面の気泡を楊枝やスプーンで取り除きます。
- 卵白15gと砂糖小さじ一杯でメレンゲを作ります。
- 2で保温しておいた無色の錦玉羹の半分を取り出して荒熱を取り、紫色の果実羹の表面が半止まりになったら、均一に流し入れます。3と同様に表面の気泡を楊枝やスプーンで取り除きます。
- 残りの錦玉羹を4のメレンゲに少しずつ混ぜ合わせて、泡雪羹にします。ゆっくり混ぜながら荒熱を取り、無色の錦玉羹の表面が半止まりになったら、均一に流し入れます。
- 冷やし固めて型から取りだし、ブルーベリーの実が一つずつ入るように切り分けます。
参考文献
- 和菓子の作り方「寒天を使った上生菓子について」、和の心・職人の技
http://hinatan.cool.ne.jp/story/kanten.htm
- 「錦玉−青楓−」、NHK趣味悠々・和菓子まるごと大全集、講師:金塚晴子、NHK出版